原題:Il Voto, Fantasia romantica
Ugo Bottacchiari

邦題:ロマン的幻想曲「誓い」
ウーゴ・ボッタッキアリ

ウーゴ・ボッタッキアリ(Ugo Bottacchiari,1879年3月10日-1944年3月17日)は、イタリア中部のマルケ州マチェラータ県にあるカステルライモンドに生まれ、スイス国境近くのコモ(ロンバルディア州コモ県)で没したイタリアの作曲家/指揮者です。
作曲作品には 歌劇、管弦楽曲、吹奏楽曲、歌曲、独奏曲等があります。マンドリン曲も多数作曲しており、マンドリン界においては最も重要な作曲家の1人となっています。
彼の生涯については、第32回定期演奏会の間奏曲「彷徨える霊」の解説に詳しく書かせていただきましたので、参照いただければと思います。

本曲《Il Voto(誓い)》は、1910年に開催されたミラノのIl Plettro誌主催の国際マンドリンコンクールの作曲部門で金メダルを獲得しています。この回の作曲コンクールでは、ファルボの組曲「田園写景」、メラナ=フォクトの序曲「過去への尊敬」も金メダルを獲得しており、いずれもマンドリンオリジナルの名曲としてよく演奏されています。

「誓い」と題されたこの曲は何を表現しようとしているのでしょうか。
1910年には北部の工業化が進み、南部との貧富の格差が拡がっていました。民衆の不満の矛先を変えるために政府はナショナリズムを煽り、翌1911年にはイタリア=トルコ戦争を起こします。そしてヨーロッパは第一次世界大戦へと向かっていきました。
こうした劇的に変化していく状況のなかで、人々が抱えていた深い絶望と、それでもなお手放さなかった希望を表現したかったのだと思います。
ボッタッキアリの作品の多くは、「生と死」「喜びと苦しみ」のような強い対比をテーマにしていると言われています。この曲もまた、「絶望と希望」という対比を描き出しているのではないでしょうか。

曲は冒頭、Largoで マンドローネのソロによる重苦しい旋律で始まります。マンドロンチェロ、マンドラとソロが重なり、tuttiが低音から徐々に積み上がって全体に拡がる様は、まるで民衆の一人の声から大勢の声へと拡がっていくようです。その声は希望へと変わり、「誓い」の主題が提示されます。再び短調となりLargo mestoで人々の思いが語られます。悲しい現在の思いと 過去の幸福な記憶が交錯するなかで 感情が高まり、激しい思いがぶつけられます。Agitato、Agitato assaiと激しさが増し、violento con drammaticita(劇的な暴力的に)と付記され、立ち上がった民衆の衝突の様子が窺われます。徐々に落ち着き、再び「誓い」の主題が現れます。そして徐々に高揚し、Arioso mossoで歓びの歌が力強く歌われます。最後にもう一度冒頭の苦しみのモチーフが現れますが、浄化されて希望の光となり曲は閉じられます。

(筆者 田口俊太郎)